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特別インタビュー企画「今求められる企業経営の指針」時代の流れにも負けない骨太経営のキーワードは「人」と「幸せ」。法政大学大学院政策創造研究科教授坂本 光司(さかもと こうじ)

厳しい社会情勢の中、あえぎ続ける日本の企業。その問題点と解決策はどこにあるのでしょうか。
シリーズ累計65万部を超えるベストセラーになった「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者である
坂本光司氏は、経営の根本を見直すことだといいます。詳しくお話しを伺ってみました。

目次 1.財形制度は人に手厚い企業のかなめ 2.好業績企業に「5つの言い訳」はない 3.「5人」を幸せにする会社

財形制度は人に手厚い企業のかなめ

——— 坂本先生がこれまでに研究されてきた「いい会社」というのは、どういうものなのでしょうか。

まず、私はこれまでに、北は北海道から南は沖縄まで、日本全国の企業を約7000社訪問してきました。私の目的は、現場に出てこの目で見聞きした実体験から研究を行うこと、それを生かしてがんばる中小企業の支援をすることです。現場にこそ真実があると信じているからです。そうして行ってきた企業訪問を詳細に分析・研究していくと、「いい会社」には共通項があるという事実に気づきました。

私のいう「いい会社」とは、何十年と継続して健全な経営を行っている会社、一度の赤字も出さず、一人のリストラも出さず、増収増益を続けてきた会社です。

「いい会社」の共通項とは、後に詳しく述べますが、先に一例を挙げるなら、福利厚生制度が非常に充実している点も見逃せません。この事実からも、私の経営論で最も重要視している「経営者は、社員とその家族を一番に考えるべきだ」という結論を導き出しています。

社員とその家族のための福利厚生制度が充実しているということは、なにより彼らの生活の安定につながります。安心して仕事に従事することができます。だから離職もしないし、この会社で頑張ろうとモチベーションが上がり、良い製品やサービスが生まれます。さらには息子や娘も入社させようとか、あるいはこの会社の人と結婚しようとか、社員が自然にそう思うようになります。つまり、福利厚生制度は社員のためのものであると同時に、良い製品開発に繋がったり良い人財が定着するなどして、結果的に会社の発展に跳ね返ってくるわけですから、社員にとっても経営者にとっても非常に大事な制度だといえます。就職したい会社の上位に「福利厚生が充実している会社」が挙げられるのも当然でしょう。しかしながら、近年では厳しい経済状況の中、多くの企業が福利厚生費を切り詰める傾向にあるようで、これは非常に残念なことです。もっとよりいっそう充実させてほしいと思います。

私が訪ねた「いい会社」では、社員やその家族が誕生日を迎えると、帰りにケーキや花を持たせる会社が結構あります。あるいは社長さんがみずから手書きでメッセージカードを書いて渡したり。会社と社員は家族だから、というぬくもりがありますね。

誕生日だけではありません。大阪市の金属バネメーカーでは、社員に子どもが生まれると、手当金の他に出産祝い金が支給されます。1人目で10万円、2人目が30万円、3人目が50万円、4人目では何と100万円です。だから4人子どもがいる社員が非常にたくさんいるのです。いい会社は、社員1人当たりの子どもの数が多いという点も共通項ですね。子どもが多いということは家族が幸せで安心して暮らしているという何よりの証明です。だから福利厚生制度の充実している会社は社員満足度が高く就労意欲も高く、結果的に業績が安定しているといえるのです。

社員の生活・資産を守る財形制度を積極的に活用

——— ただし、福利厚生制度への期待は会社側と社員側で温度差があるようですが?

福利厚生制度への期待

福利厚生とひとくちにいってもその内容はさまざまです。ですから福利厚生をひとくくりにして考えずに、その内容をよく精査することも非常に重要です。

勤労者退職金共済機構さんのホームページのデータを拝見しました。「福利厚生制度への期待」というデータを良く分析してみる必要がありそうです。健康・医療は会社側も社員側も特に期待値の高い分野で、これは当然かと思います。一方で、自己啓発は会社側の期待値は高いけれど社員側はそれほどでもない。これは会社側が「自己啓発を通して業務・業績に貢献できる社員を育成したい」と考えている現れではないでしょうか。逆に住宅や財産形成に関する期待値は会社側は低いけれども、社員側は非常に高い期待値を示しています。

これはニーズにミスマッチがあるといえそうですね。社員はやはり自分の住まいや生活や貯蓄に対しての関心の方が高いのです。社員は、自分と家族のことや退職後のことにも目を向けて、生涯幸せな人生を生きるための福利厚生を備えてほしいと思っているのです。こういう社員の要望を知るためにも、経営者は社員満足度調査などをしばしば行うべきでしょう。それに照らし合わせて問題を仕分けし、今日やるところ、明日やるところ、と進めていけばいい。そうすれば社員の満足度はもっと高まり、モチベーションが上がる。その結果として業績も上がります。

財形制度は、社員の勤労意欲を高め、労使関係を安定させます。優秀な人財の確保やその定着につながります。また社内融資の資金を公的融資から調達することもできます。こうした会社にとってのメリットに注目して、ぜひ多くの会社に導入してほしい制度ですね。社員が退職したあとの、老後の生活設計を援助することもできるという、まさに社員とその家族のために会社が貢献できる制度なのですから。

財形制度に力を入れることは、社員とその家族にとって有意義であると同時に、経営のかなめを強靱にする制度です。社員が安心・安定して意欲的に働くために、これほどに確かな業績向上の種はないのではないでしょうか。経営者のみなさんには、ぜひ積極的にこの種をまいていただきたいと思います。

好業績企業に「5つの言い訳」はない
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