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特別インタビュー企画「今求められる企業経営の指針」時代の流れにも負けない骨太経営のキーワードは「人」と「幸せ」。

目次 1.財形制度は人に手厚い企業のかなめ 2.好業績企業に「5つの言い訳」はない 3.「5人」を幸せにする会社

好業績企業に「5つの言い訳」はない

——— さて、長引く景気の低迷や、大規模なリストラ、繰り返される企業の不祥事など、今日本の企業は多くの問題を抱え、業績が上がらず苦しんでいます。その原因はどこにあるのでしょうか。

今の日本の企業を業績別に3分割しますと、ひとつは好況でも不況でも利益を出すことができない「構造的不況企業」というか「限界企業」というグループがあります。次が、好況になると業績が上がるけれど不況になると業績が下がるという「景気連動型企業」とか「景気期待型企業」というグループ。そして3つめのグループが、好況でも不況でも人々の支持を受け増収増益を続ける「景気創造型企業」です。

それぞれのグループの割合は、20年ほど前までは構造的不況企業が2割ぐらい、景気連動型企業が6割ぐらい、そしてどんな時代でも赤字を出さない景気創造型企業が2割ぐらいでした。今はその状況が変わって構造的不況企業が6割、景気連動型企業が2割になりましたが、景気創造型企業は2割のままです。ここで私は好況でも不況でも赤字を出さない会社は、20年以上前も今も変わりなく存在しているという点に注目したのです。どれだけ時代が変わっても、変わらず社会の支持を受けている会社が、数は少ないけれどあるのだということです。ということは、景気が業績に影響するというこれまでの経営に対する一般論は、どこか違うのではないか。景気=業績だと考えている経営は、誤解か錯覚ではないかと考えたわけです。そこで私はこの2割の景気創造型企業を徹底的に研究して、そのビジネスモデルを明らかにして、1社でも多くの企業が同じように発展して貰いたいと思い、本を書いたり講演を続けています。

ですから、問題点は、まず業績の良し悪しを景気のせいだと一言で片付けないこと。それよりも経営者の経営の考え方や進め方を見直し、時代に適応したかしないか、時代が求める新しい価値を創造したか否か、自社の内側を見つめ直すこと。私は、問題は外じゃなく、すべて内にあると思っています。

問題は内部にあるという気づきが大切

——— そうした観点から、いい会社には「5つの言い訳」がないと?

そうです。「5つの言い訳」というのは、企業がうまくいかない原因を外部に転嫁していることを指して私が名付けました。

5つのうちの1つ目は「業績が上がらないのは景気や政策のせいだ」とするもの。2つ目は「我が社は恵まれた業種じゃない」とするもの。3つ目は「規模の小さい会社には限界がある」とするもの。4つ目は「我が社の商圏や立地場所が悪い」とするもの。そして最後の5つ目は、「大企業・大型店に勝てるわけがない」とするものです。

これらを細かく解説しましょう。まず1つ目の「景気や政策」のせいにする点。これは、先に述べた2割の景気創造型企業が、好況だろうが不況だろうが、何十年も増収増益を続けている実例があることから、疑問だといえます。

私がこれまで見てきた7000社の中で、約1割は売上高経常利率が5%以下になったことがありません。赤字を出したことのない会社も2割あります。そして最高峰の会社は66年間、増収増益という会社があります。だから問題は外ではなく、経営の考え方進め方ではないかと私は考えるのです。

2つ目の「業種」というのは、「いくら景気のせいじゃないといったって、我が社の業種はどうしようもない斜陽産業じゃないか」というものです。しかし、もしこの業種はもう時代の使命を終えたと考えるのであれば、それをもんもんとやり続ける理由はないはずです。 今の業種と他の業種をドッキングするとか、自分の業種をどんどん川上へ攻めていく、あるいは川下へ広げていくとか、あるいは他の業種と連携するとか、もともとの業種をベースにしてその業種を進化させていく、そういう会社はいくらでもあります。創意工夫と努力で時代に適応する経営をやってきた会社が生き残っていくのです。

3つ目の「規模」の言い訳も同様です。今は高齢化社会ですし個性化の時代です。多品種少量、多品種微量が求められる時代。ですから中小企業はむしろ優位なはずです。たとえば東京で人気のあるお菓子屋さんのひとつに、東京都吉祥寺にある和菓子店があります。この会社は30年以上前からお客さんの行列を切らしたことがない。店の売り場は1坪。私の診断では、日本のお菓子屋さんの坪生産性は、500万円あればいい方です。しかしこの店は同じ1坪で約4億円です。インターネット販売等は行っておらず、ほぼ店頭販売です。店員も2人です。だから業績は規模の問題でもありません。

4つ目の「ロケーション」。今日本で一番規模の大きい和洋菓子屋さんは北海道帯広市の和洋菓子店で、従業員は約1200人。この会社は本州には店舗がなく、北海道にだけ店舗を構えています。それでいて日本で一番になったということは、私たちがわざわざそこへ行って買っているか、インターネット販売等で買っているということです。価値あるものであれば、私達はそれを買いたいという気持ちになる。商圏の大小や立地条件ではなく、一番大事な価値は「感動」なのです。

また、今日本で一番人気のある自動車学校が3社あるのですが、そのうちのひとつがあるのは島根県、しかも松江でも出雲でもない、山口県境の益田というところです。料金が極端に安いわけではありません。それでも全国47都道府県からここで免許を取りたいという人が集まってくる。なぜか。他の自動車学校にはない楽しいこと、魅力的なことをしているからです。

最後5つ目の「大型店や大企業に勝てない」という言い訳も誤解だといえます。小売業でいえば、静岡県富士市のフルーツ店が好例でしょう。ここはひなびた地方の商店街に立地している家業的小売商店です。しかしながら、大手スーパーやコンビニエンスチェーンが、1年分を先に現金で支払うから、大人気の商品を仕入れさせてほしいといってくるそうです。それを受ければたしかに一時的に会社の規模は大きくなるかもしれません。しかし会社の目的とは規模を大きくすることではないと考えているから、あえて申し出を受けないのです。小売商店でも本当に良いものを作れば大型店に勝つことができるのです。

「5人」を幸せにする会社
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